
現在、我が社では特定技能外国人を複数名雇用しており、サポート業務を外部の登録支援機関に全面委託しています。しかし、受け入れ人数が増えるにつれて毎月の委託コストが膨らみ、社内からも「そろそろ自社支援(内製化)に切り替えられないか」という声が出ています。登録支援機関を入れずに自社だけで受け入れるための具体的な要件や、手続きの流れ、人事として注意すべき現場のポイントを詳しく教えてください。

ご質問ありがとうございます。 結論から申し上げますと、特定技能外国人のサポートを外部に委託せず、自社で全ての支援計画を策定・実施する「自社支援」への切り替えは十分に可能です。実際に、受け入れ人数が増えた段階で固定費を削減し、同時に社内のサポート力を高めるために自社支援へ移行する企業は年々増加しています。
ただし、自社支援を行うには、出入国在留管理庁(入管)が定める厳格な「体制要件」や「人・組織の基準」をクリアしなければなりません。手続きを誤ると「適切な支援が行われていない」とみなされ、不許可や制度違反のリスクを背負うことになります。「うちの会社、今の体制のままで本当に大丈夫かな……」と不安に思われる担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、人事担当者様が直面する自社支援の基礎知識から、クリアすべき要件、具体的な移行ステップまで、現場目線で分かりやすく解説します。
目次
1.特定技能の「自社支援」とは?外部委託との違いと要件
特定技能制度において、企業(特定技能所属機関)には外国人従業員が日本で円滑に就労・就業できるよう、生活支援や相談対応など「10項目の支援計画」を適切に履行する義務が課されています。この支援を外部の登録支援機関へ委託せず、企業が自社のリソースだけで実施する形態を「自社支援」と呼びます。
自社支援をスタート、または外部委託から切り替えるにあたっては、登録支援機関と同等のサポート体制が自社にあるかを証明する必要があります。皆様の会社では、もし自社支援に切り替えた場合、以下のような違いに現場が対応できそうか、まずは比較表でイメージを膨らませてみてください。
【登録支援機関への委託と自社支援の比較】
| 項目 | 登録支援機関への外部委託 | 自社支援(内製化) |
|---|---|---|
| 毎月のランニングコスト | 外国人1人あたり数万円の委託費が発生(人数比例で増加) | 自社の労務・人件費のみ(固定費の大幅な削減が可能) |
| 支援責任者・担当者の設置 | 委託先機関の職員が担当 | 自社の役職員から選任(所属部署などの制限に注意) |
| 対応言語(通訳体制) | 登録支援機関が対応言語をカバー | 外国人が「十分に理解できる言語」での面談・通訳体制が自社に必要 |
| 社内ノウハウの蓄積 | 外部任せになり、社内に知見が残りにくい | 外国人雇用・支援のノウハウが社内に強固に蓄積される |
| 現場トラブルへの対応力 | 外部を挟むため、対応までにタイムラグが発生しやすい | 人事や現場がリアルタイムに状況を把握し、即座に対応可能 |
| 主な手続き | 委託契約の締結、定期・随時の届出 | 支援計画書の再作成・提出、支援体制の変更届出など |
2.人事担当者が知っておくべき「自社支援」4つの重要ルール
自社支援への切り替えを検討する際、人事が特に注意して体制を整えるべき「4つの重要ルール」について深掘りして解説します。
| ①支援体制の「中立性」の確保(担当者選任のルール) | 自社支援を行うためには、社内に「支援責任者」と「支援担当者」をそれぞれ選任する必要があります(兼務も可能です)。ただし、誰でも良いわけではありません。
▼NG例 対象となる外国人従業員の「直属の上司(現場の指揮命令者)」を支援担当者にすること。 ▼理由 業務上の上下関係がある場合、外国人が「残業代が正しく支払われていない」「有給が取りづらい」といった本音の悩みを相談しにくくなるため、原則として認められません。人事部や総務部など、現場の指揮命令ラインから独立したポジションの社員を配置する必要があります。 【要注意ポイント】 この記事を読んでいただいている方の中には、もしかすると「現場のリーダーにそのまま担当してもらおう」と考えていた方もいらっしゃるかもしれませんが、ここは入管が厳しくチェックするポイントですので注意が必要です。 |
|---|---|
| ②外国人が「完全に理解できる言語」での相談体制 | 入社前の事前ガイダンス実施や、3ヶ月に1回以上義務付けられている定期面談は、外国人が十分に理解できる言語(ネイティブ言語、または極めて流暢な日本語)で実施しなければなりません。
社内に通訳・翻訳ができるバイリンガル社員がいない場合は、外部の通訳システムや通訳者とスポット契約を結ぶなど、確実に意思疎通ができる体制を客観的に証明する必要があります。 |
| ③自社支援だからこそ得られる「定着率向上」のメリット | 外部委託の場合、面談やサポートが形式的になりがちですが、自社支援であれば「体調を崩しがち」「職場の人間関係で悩んでいる」といった日常の微小な変化に人事やサポート担当者がいち早く気づくことができます。「せっかく仕事を覚えてもらったのに、急に辞められてしまった……」という問題は生じていませんか?
問題が深刻化して「突然の失踪」や「他社への転職」に至る前に社内で手を打てるため、結果として離職率の低下と定着率の向上に直結します。 |
| ④「記録管理」と「入管への届出」の厳格な義務(※要注意) | 自社支援で最も人事の負担となるのが事務管理です。定期面談の実施記録、生活オリエンテーションの実施ログなどは全て書面で残し、保管しておく義務があります。さらに、1年に1回の「定期届出」や、経営状況・支援体制が変わった際の「随時届出」の作成・提出も全て自社で行わなければなりません。
「実務としては手厚くサポートしているが、入管への書類提出や記録を怠っていた」という状態は、制度違反とみなされる最大の運用リスクとなります。 |
3. 自社支援(内製化)へスムーズに切り替えるための5つのステップ
現在、登録支援機関へ委託している状態から、トラブルなく自社支援への切り替え(内製化)を実現させるための準備として下記ステップが求められます。
【自社支援移行へのステップとチェックポイント】
| ステップ | 業務内容 | 現場でのチェックポイント |
|---|---|---|
| ①委託契約の確認と解除予告 | 現在の登録支援機関との契約書を確認し、解約条項(何ヶ月前予告か)をチェック。 | 切り替えは企業の判断で可能ですが、円満な移行のために既存の委託先への早期の相談・調整が必要です。 |
| ②社内体制・担当者の選任 | 現場の指揮命令ラインから外れた「支援責任者・担当者」を決定。 | ▼要件充足パターン①
自社自身が、過去2年間に中長期在留者の受け入れ実績がある企業であるか否かを確認。 ▼要件充足パターン② 過去2年間に中長期在留者の生活相談業務に就いた経験のある職員が自社内にいるか否かを確認 上記のうち①②いずれかの選任要件を満たしているかをまずは確認。 |
| ③言語サポート環境の整備 | 外国人従業員の母国語に対応できる通訳体制(社内人材または外部サービス)を確保。 | 面談時やトラブル発生時に、即座にその言語で対応できる体制が整っているか。 |
| ④支援計画の再作成と届出 | 自社支援用の「特定技能外国人支援計画書」を新たに作成。入管へ変更の届出を行う。 | 外部委託から自社支援への切り替えは「支援計画変更の随時届出」等が必要。添付書類の漏れがないか入念に確認。 |
| ⑤運用スタートと記録のルーティン化 | 自社での支援を開始。定期面談の実施や各種届出スケジュールをタスク管理。 | もし自社支援に切り替えるならば、今のうちに1年に1回の定期届出の期日を人事カレンダーに組み込み、対応漏れが絶対に起きない仕組みを作っておきましょう。 |
4.おわりに
特定技能の自社支援(内製化)は、外国人受け入れ人数が多い企業にとっては、毎月数十万〜数百万円にのぼる委託コストを劇的に削減できる非常に有効な手段です。また、企業が直接従業員に向き合うことで、「人材育成に投資し、外国人を大切にする企業」としてのブランド力が高まり、結果として新たな採用力の強化にも繋がります。
一方で、法改正や入管運用のルール変更に常にアンテナを張り、複雑な書類作成や期日通りの届出を確実に遂行していく事務負担は決して小さくありません。
- 「コストは抑えたいが、人事が手続きを内製化するのはハードルが高い……」
- 「自社支援の計画書作成や届出だけを、スポットで専門家に任せたい!」
そうお悩みの人事担当者様は、ぜひお気軽に当事務所へご相談ください。貴社の体制点検から、スムーズな内製化の手続きまで、実務をトータルでサポートいたします。



